簡易課税 は、消費税の納める額を計算するときに、仕入れの消費税を実際の額で積み上げる代わりに、売上にかかる消費税額に業種ごとの みなし仕入率 をかけて出す方法です。国税庁は、中小事業者の事務の負担に配慮した制度だと説明しています。

使えるのは、基準期間(法人は原則として2期前)の課税売上高が 5,000万円以下 の期です。使うには、前もって税務署に届出書を出しておく必要があります。

カレンダーの前の日に印が付いた書類と、2つ続いた期を示す帯の図

出す期限は「使いたい期の初日の前日」

「消費税簡易課税制度選択届出書」は、簡易課税を使いたい課税期間の 初日の前日まで に、納税地の税務署に出します。法人の課税期間は、原則として事業年度です。つまり、今の期の末日まで に出すと、次の期から簡易課税になります。

  • 10月31日(日)10月決算の会社が、2027年11月1日からの期で使いたいとき2027年10月31日は日曜日。それでも期限は延びない
  • その期の末日会社を作った期から使いたいとき事業を始めた日を含む期は、その期の中に出せばよい

国税庁「消費税簡易課税制度選択届出手続」の提出時期から。

申告や納付の期限は土日祝日にあたると次の平日に延びますが、この届出書の期限は延びない扱いです。くわしくは「期限が土日祝日・年末年始にあたったら」にまとめています。期限が休日にあたるときに出す方法(e-Taxや郵便)も、同じ記事で紹介しています。

出し方は、e-Taxソフト(WEB版)の「法人の方」から送るか、パソコンのe-Taxソフトで作るか、書面で持っていく・送るかのどれかです。様式と記載要領は、国税庁の手続のページにあります。

よくある勘違い

決算が終わってから、簡易課税にするか決めればいい?

原則として間に合いません。使いたい期が始まる前に出しておく届出書です。決算を終えて申告書を作る段階では、その期の計算方法はもう決まっています(あとで書く特例にあたる場合を除きます)。

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一度選ぶと、2年間はやめられない

簡易課税をやめるときは「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」を、やめたい期の初日の前日までに出します。ただし、事業をやめた場合を除き、選択届出書の効力が生じた期の初日から2年を経過する日を含む期の初日以後 でなければ、この届出書は出せません。

10月決算の会社が、2027年11月1日からの期で簡易課税を使いはじめた場合で、手で数えてみます。

  1. 1期目:2027年11月1日〜2028年10月31日簡易課税で申告する。この期の中では、不適用届出書を出せない
  2. 2期目:2028年11月1日〜2029年10月31日2027年11月1日から2年を経過する日(2029年10月31日)を含む期。この期の初日から、不適用届出書を出せる
  3. 3期目:2029年11月1日〜2期目の末日(2029年10月31日)までに不適用届出書を出していれば、この期から簡易課税ではなくなる

事業年度が1年の会社なら、少なくとも2期は簡易課税で申告することになります。

簡易課税では、仕入れの消費税を実際の額で計算しません。国税庁のQ&Aでは、大きな設備投資などで仕入れの消費税が売上の消費税を上回る場合、一般課税なら還付が生じても、簡易課税では通常は還付が生じないことにも触れています。2年続くことを前提に、届出の前に見通しを立てておきます。

なお、選択届出書を出していても、基準期間の課税売上高が5,000万円を超える期は簡易課税を使えません。また、高い資産(調整対象固定資産や高額特定資産)を仕入れた場合などは、選択届出書を出せない期間があります。

あとから出せる特例(インボイス登録・2割特例のあと)

インボイス制度に関係して、期の初日より後に出しても間に合う特例が2つあります。

免税事業者がインボイス登録をした期

令和5年10月1日から令和11年9月30日までの日を含む期に登録を受け、登録日から課税事業者になった場合

登録日を含む期の中 に出せば、その期から簡易課税を使える

2割特例を使った次の期

2割特例(個人は3割特例も)を使った期の、次の期から簡易課税にする場合

次の期の確定申告の期限まで に出せば、その期から使える

次の期が令和8年9月30日以前に終わる場合は、その期の末日まで

どちらも、届出書に「その期から簡易課税を使う」旨を書きます。国税庁「No.6505 簡易課税制度」「令和8年度税制改正特集」から。

2割特例は、法人は令和8年9月30日を含む課税期間までです。10月決算の会社なら、2025年11月〜2026年10月の期が最後で、2026年11月からの期で簡易課税にするなら、その期の確定申告の期限(原則2027年12月31日)までに出せば間に合います(「2割特例はいつまで使える?」)。

うっかり出し忘れた場合は、特例の対象になりません。国税庁は、災害などの「やむを得ない事情」があるときに限って、税務署長の承認で期限内に出したとみなす決まりを案内していますが、届出書の提出を忘れていた場合は、やむを得ない事情にあたらない としています。

出す前に確かめること

  • 今の期と次の期の、基準期間の課税売上高(5,000万円以下か)
  • 自社の売上が、6つの事業区分のどれにあたるか(みなし仕入率は業種で90%〜40%)
  • 次の期とその次の期に、大きな設備投資などの予定がないか
  • 届出書の控え(e-Taxなら受信通知)を保存したか

事業区分の考え方は、国税庁の「No.6509 簡易課税制度の事業区分」に載っています。業種の当てはめに迷うときは、税務署や税理士に確かめます。申告の流れは「一人社長の消費税の確定申告」をご覧ください。

参考

この記事は一般的な情報です。会社ごとの判断は、税務署や税理士などの専門家に確認してください。