一人社長の役員報酬は、毎月同じ額を払う 定期同額給与 が基本です。毎月の額の決め方と変え方は「役員報酬を決める・変える時期」にまとめています。
それとは別に、夏や冬に自分へ賞与を払いたいときに使うのが 事前確定届出給与 です。「いつ、いくら払うか」を前もって決めて税務署に届け出て、そのとおりに払う給与のことです。この記事では、その届出の期限と、払うときの注意点をまとめます。
一人社長の会社は届出が必要
国税庁の案内では、役員に払う給与のうち、定期同額給与・事前確定届出給与・一定の業績連動給与のどれにもあてはまらないものは、損金(税金の計算で経費として差し引けるもの)になりません。
事前確定届出給与は、「所定の時期に確定した額の金銭などを渡す」という定めに基づいて払う給与です。原則として、その定めの内容を税務署に届け出ていることが条件です。
届出がいらないのは、同族会社に該当しない法人 が、定期給与を払っていない役員に払う金銭の給与などに限られます。法人税法では、株主3人以下(とその親族など)で株の50パーセントを超えて持っている会社を 同族会社 としています。株主が社長1人の会社はこれにあたるので、賞与を払うなら届出が必要です。
毎月の役員報酬
定期同額給与
期首から3か月以内に決め、毎月同じ額で払う。届出はいらない
役員の賞与
事前確定届出給与
時期と金額を決めて、期限までに税務署へ届け出る
一人社長の会社では、業績連動給与は使えません(同族会社のため)。
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届出の期限は「早いほう」
株主総会などの決議で賞与の定めをした場合、届出の期限は、次の2つのうち 早い日 です。
① 決議の日から1か月を経過する日
決議の日が、その職務の執行を始める日より後なら、職務の執行を始める日 から数える
② 期首から4か月を経過する日
その職務期間が始まる日を含む会計期間(事業年度)の、始まる日から数える
①と②を比べて、先に来るほうが期限です。
申告期限の延長の特例を受けている会社は、②の「4か月」が、延長の指定を受けた月数に3を足した月数になります。
「1か月を経過する日」の数え方
国税庁の届出書の記載要領では、「決議をした日から1月を経過する日」は、決議の日の翌日 から暦で数えるとしています。記載要領の例では、決議の日が5月25日なら、起算日は5月26日で、翌月の応当日(6月26日)の前日の 6月25日 が「1月を経過する日」です。
つまり、決議の日の翌月の同じ日が期限になる、と覚えておくと分かりやすいです。
設立したときは「2か月」
会社を作ったときに、その設立の時から始まる職務について賞与の定めをした場合は、設立の日以後2か月を経過する日 が期限です。
役員の地位や仕事が大きく変わったとき
役員の地位が変わったり、仕事の内容が大きく変わったりしたこと(臨時改定事由)によって新たに定めをしたときは、上の期限と、その事由が生じた日から1か月を経過する日の、遅いほう が期限です。
例:3月決算の会社が6月25日に総会を開いた場合
3月決算(期首4月1日)の会社が、6月25日の定時株主総会で、その日から始まる職務について12月と翌年6月に賞与を払うと決めた例です。
- 6月25日定時株主総会で、支給の時期と金額を決める議事録を作って会社に残す
- 7月25日届出の期限決議の日から1か月を経過する日。期首から4か月を経過する日より先に来る
- 12月決めた日に、決めた額を支給するこの期のうちの支給
- 翌年6月決めた日に、決めた額を支給するこの職務期間の最後の支給
期首(4月1日)から4か月を経過する日は7月25日より後なので、この例では①の「1か月」のほうが先に来ます。
期限が休日にあたったら
この届出の期限が土日祝日にあたったときに次の平日まで延びるかどうかは、この記事を書くときに国税庁の資料で確かめられませんでした。延びない場合に備えて、休日の前の平日までに窓口へ出す か、e-Taxで期限の日までに送る と確実です。国税庁の手続の案内では、この届出書は e-Taxソフトで作成・提出するよう案内しています。休日の扱いの全体は「期限が土日祝日・年末年始にあたったら」にまとめています。
届け出たとおりに払う
事前確定届出給与は、支給の時期と金額が前もって確定していて、実際にもそのとおりに払う 給与に限られます。
届け出たとおりに払った
事前確定届出給与として損金になる
届け出た額と違う額を払った
事前確定届出給与にあたらない
多く払った場合も、少なく払った場合も同じ
よくある勘違い
2回のうち1回だけ少なく払ったら、少なかった回だけが対象外?
国税庁の質疑応答事例では、支給が2回以上あるときは、定時株主総会から次の定時株主総会までの 職務執行期間をひとまとまり として判定するとしています。3月決算の会社が12月の支給を少なく払い、翌年6月に満額を払った例では、その期間の支給の全額が事前確定届出給与にあたらないとされています。
ただし、その期のあいだ(12月)は届け出たとおりに払い、翌期(翌年6月)の支給だけが違った場合は、翌期に払った分だけを損金にしない扱いでよいとされています。
払えなくなりそうなとき
役員の地位や仕事の内容が大きく変わったとき(臨時改定事由)や、経営の状況が著しく悪化して賞与を減らすとき(業績悪化改定事由)は、事前確定届出給与に関する変更届出書 で定めの内容を変えられます。
臨時改定事由
事由が生じた日から1か月を経過する日まで
業績悪化改定事由(減らす場合)
変更を決議した日から1か月を経過する日まで
ただし、決議の後で最初に来る、変更前の定めによる支給の日がそれより前なら、その支給の日の前日まで
どちらも税務署に出します。業績悪化にあたるかは、専門家に相談してから決めます。
払ったあとの手続き
賞与を払ったら、税金とは別に社会保険の届出もあります。日本年金機構の案内では、社会保険に入っている会社が賞与を払ったときは、支給日から5日以内 に「被保険者賞与支払届」を出します。くわしくは「賞与支払届の出し方」にまとめています。
賞与の額をいくらにするか、賞与にするか毎月の報酬に含めるかは、会社と社長個人の税金・社会保険料の両方に関わります。決める前に税理士などに相談しておくと安心です。
自分の会社の期限は、トップの「法人の期限チェッカー」で決算月を選ぶと確認できます。
参考
- No.5211 役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分)(国税庁)
- C1-23 事前確定届出給与に関する届出(国税庁)
- 事前確定届出給与に関する届出書の記載要領等(国税庁・PDF)
- C1-24 事前確定届出給与に関する変更届出(国税庁)
- 定めどおりに支給されたかどうかの判定(事前確定届出給与)(国税庁・質疑応答事例)
- 法人税法(e-Gov法令検索)
- 従業員に賞与を支給したときの手続き(日本年金機構)
この記事は一般的な情報です。会社ごとの判断は、税務署や税理士などの専門家に確認してください。