会社の資本金を増やす方法はいくつかありますが、よく使われるのは、会社が新しく株式を発行して、引き受けた人にお金を払い込んでもらう方法です。会社法では「募集株式の発行」と呼びます。社長が自分で追加の出資をするときも、この手続きになります。
ここでは、株主も取締役も社長1人で、株式を譲るのに会社の承認がいる会社(会社法の「公開会社」でない会社。多くの小さな会社はこの形です)が、お金を払い込む形で増資するときの流れを、会社法と商業登記法に沿って整理します。
増資の流れ
- 募集事項を決める株主総会の特別決議で、募集株式の数・払込金額・払込みの期日(または期間)・増える資本金と資本準備金を決める(会社法199条)
- 引受けの申込みと割当て申込みと割当て(会社法203条・204条)、または総数を引き受ける契約(会社法205条)
- 払込み期日か期間内に、会社が決めた銀行などの払込みの取扱いの場所に、払込金額の全額を払い込む(会社法208条1項)
- 株主になる・資本金が増える期日を決めたときは期日に、期間を決めたときは払い込んだ日に株主になる(会社法209条)
- 変更の登記2週間以内に、本店の所在地で登記を申請する(会社法915条)
- 税務署などへの届出異動届出書を速やかに出す
1. 募集事項を決める
会社法199条1項では、募集株式を発行するたびに、次の「募集事項」を決めるとしています。
- 募集株式の 数
- 募集株式の 払込金額(1株と引換えに払い込む金銭などの額)またはその算定方法
- 金銭以外の財産を出資するときは、その旨と財産の内容・価額
- 払込み(または財産の給付)の 期日 か 期間
- 株式を発行するときは、増加する資本金と資本準備金 に関する事項
公開会社でない会社では、募集事項は 株主総会の決議 で決めます(会社法199条2項)。この決議は、定款の変更と同じ 特別決議(会社法309条2項5号)です。株主が社長1人なら、社長が出席して賛成すれば要件を満たします。株主全員が書面で同意すれば決議があったものとみなす方法もあります(会社法319条1項。くわしくは「事業目的を足すときの手続き」)。
払込金額が、引き受ける人に 特に有利な金額 のときは、取締役が株主総会でその理由を説明しなければなりません(会社法199条3項)。社長以外の人に引き受けてもらうと株主の構成が変わるので、金額の決め方は専門家に相談します。
資本金にする額
会社法445条では、資本金の額は、原則として 株主になる人が払い込んだ財産の額 です。ただし、払い込んだ額の 2分の1を超えない額 は資本金にせず、資本準備金 にできます(同条2項・3項)。どちらにするかは、募集事項の「増加する資本金と資本準備金に関する事項」で決めます。
2. 引受けと払込み
申込みと割当て
- 会社が募集事項などを知らせ、申し込む人が氏名・住所・株式の数を書いた書面を出す(会社法203条)
- 会社が割り当てる人と数を決め、期日(期間の初日)の前日までに知らせる(会社法204条)
総数引受契約
- 引き受ける人が、募集株式の 総数 を引き受ける契約を結ぶ(会社法205条1項)。申込みと割当ての手続は使わない
- 譲渡制限株式なら、株主総会の決議で契約の承認を受ける(同条2項。定款に別段の定めがあれば別)
社長1人が全部引き受けるときは、どちらの形でも進められます。譲渡制限株式の割当ても、株主総会の決議で決めます(会社法204条2項。定款に別段の定めがあれば別)。
払込みは、会社が決めた銀行などの 払込みの取扱いの場所 に、払込金額の 全額 を払い込みます(会社法208条1項)。払込みをする債務と、会社に対する債権(社長が会社に貸しているお金など)を相殺することはできません(同条3項)。払い込まなければ、株主になる権利を失います(同条5項)。
よくある勘違い
社長が会社に貸しているお金を、そのまま資本金に振り替えればいい?
払込みの債務と会社に対する債権は、相殺できません(会社法208条3項)。お金を払い込む形の増資では、決めた払込みの取扱いの場所に、実際に払い込みます。金銭以外の財産を出資する方法には、検査役の調査などの別の決まりがあります(会社法199条1項3号、商業登記法56条3号)。
3. 登記は2週間以内
会社法911条3項では、資本金の額 と 発行済株式の総数 は登記事項です。増資でこれらが変わったら、会社法915条1項により、2週間以内に本店の所在地で変更の登記をします。
- 株主総会募集事項を決める(特別決議)
- 期日の前日まで割り当てる株式の数を知らせる(または総数引受契約)
- 払込みの期日全額を払い込む。この日に株主になる期間を決めたときは、払い込んだ日
- 2週間以内変更の登記を申請する期間を決めたときは、その期間の末日から2週間以内でよい(会社法915条2項)
期日を1日目として数えておくと、遅れる心配がありません。最後の日が土日祝日や年末年始にあたるとき次の日に延びるかは、この記事では確かめられていないので、前の平日までに申請しておくと安心です。
登記を怠ると、会社法976条で 100万円以下の過料 の対象になります。
申請書に付ける書類
商業登記法56条・46条、商業登記規則61条では、金銭を払い込む増資の登記の申請書に、主に次のものを付けます。
- 募集株式の引受けの申込みを証する書面、または 総数引受契約を証する書面(商業登記法56条1号)
- 払込みがあったことを証する書面(同条2号)
- 株主総会の議事録(商業登記法46条2項)。書面決議のときは、決議があったものとみなされる場合にあたることを証する書面(同条3項)
- 株主リスト(商業登記規則61条3項)
- 資本金の額が会社法と会社計算規則に従って計上されたことを証する書面(商業登記規則61条9項)
- 代理人に頼むときは委任状
書面の作り方は、法務局の申請書の記載例で確かめます。オンラインで申請するときは、申請用総合ソフトと電子署名を使います(登記・供託オンライン申請システムの案内)。
登録免許税
資本金の増加の登記
増加した資本金の額 × 1,000分の7
計算した額が3万円に満たないときは、1件3万円
国税庁の登録免許税の税額表(株式会社または合同会社の資本金の増加の登記)と、登録免許税法 別表第一 24号(一)ニによります。課税標準は「増加した資本金」の額で、資本準備金にした分は入りません。
4. 税務署などへの届出
国税庁の「異動事項に関する届出」の案内では、資本金の額等の異動 をした法人は、異動届出書を 異動等後速やかに、異動前の納税地の所轄税務署長へ出します。e-Taxで出すこともでき、添付書類は「なし」(内容の確認のため定款などの写しを求められることがある)とされています。
都道府県・市町村への届出の要否や様式は、自治体ごとに決まっています。本店のある都道府県と市町村のページで確かめます。
増資の時期や額を決める前に、税理士などの専門家に相談しておくと安心です。登記のあとは、登記事項証明書で資本金と発行済株式の総数が変わったかを確かめます(「履歴事項全部証明書と印鑑証明書の取り方」)。
参考
- 会社法(e-Gov法令検索)
- 商業登記法(e-Gov法令検索)
- 商業登記規則(e-Gov法令検索)
- 登録免許税法(e-Gov法令検索)
- No.7191 登録免許税の税額表(国税庁)
- C1-8 異動事項に関する届出(国税庁)
- 商業・法人登記手続(登記・供託オンライン申請システム)
この記事は一般的な情報です。会社ごとの判断は、税務署や税理士などの専門家に確認してください。