新しい仕事を始めるときに、会社の「事業目的」に当てはまる項目がないことがあります。事業目的は、定款に書く事項であり、登記簿にも載っている事項です。足したり変えたりするときは、定款の変更 と 変更の登記 の2つが必要です。
ここでは、株主も取締役も社長1人という会社が、事業目的を足すときの流れを、会社法と商業登記法、国税庁の案内に沿って整理します。
事業目的は「定款」と「登記」の両方にある
会社法27条は、株式会社の定款に必ず書く事項の1番目に「目的」を挙げています。また、会社法911条3項1号で、目的は設立のときに登記する事項になっています。
定款
会社の基本のルール。目的を変えるには 株主総会の決議 で定款を変える(会社法466条)
登記簿
だれでも証明書で見られる会社の情報。目的が変わったら 2週間以内に変更の登記(会社法915条1項)
定款を変えただけでは、登記簿の目的は変わりません。
よくある勘違い
社長1人の会社なら、定款の文を書き換えれば終わり?
終わりません。定款の変更は株主総会の決議で行い、議事録(または書面決議の書面)を残します。そのうえで、目的が変わったことを登記します。登記を怠ると、会社法976条で 100万円以下の過料 の対象になります。
株主総会の特別決議で定款を変える
会社法466条では、株式会社は成立後、株主総会の決議によって定款を変更できるとしています。この決議は、会社法309条2項(11号)の決議、いわゆる 特別決議 です。
特別決議の要件(会社法309条2項)
- 議決権を行使できる株主の議決権の 過半数 を持つ株主が出席(定款で3分の1以上の割合まで下げられる)
- 出席した株主の議決権の 3分の2以上 の賛成(定款でこれより高くできる)
株主が社長1人の会社
社長が議決権のすべてを持っているので、社長が出席して賛成すれば要件を満たす
書面で同意する方法(書面決議)
会社法319条1項では、取締役や株主が株主総会の目的である事項を提案し、議決権を行使できる 株主の全員が書面または電磁的記録で同意 したときは、その提案を可決する株主総会の決議があったものとみなす、としています。株主が社長1人なら、社長が提案して、社長が同意の書面を作る形です。
みなされた日から10年間、同意の書面を本店に備え置きます(同条2項)。実際に株主総会を開く場合は、株主の全員が同意すれば招集の手続を省けます(会社法300条)。開いた場合は議事録を作り、総会の日から10年間、本店に備え置きます(会社法318条)。
目的の書き方
目的の書き方そのものは、この記事では扱いません。足したい事業に許認可がいる場合などは、その窓口や法務局、司法書士に、決議の前に書き方を確かめておくと、決議のやり直しを防げます。
登記は変更から2週間以内
会社法915条1項は、911条3項の事項(目的を含む)に変更が生じたときは、2週間以内に、本店の所在地で変更の登記 をしなければならない、としています。
- 株主総会定款の目的を変える決議をする書面決議なら、株主全員の同意がそろった日に決議があったとみなされる
- 数え始め定款の変更の効力が生じた日この日を1日目として数えておくと、遅れる心配がない
- 2週間以内本店の所在地を管轄する法務局に、変更の登記を申請する
- 速やかに税務署に異動届出書を出す
期限の最後の日が土日祝日や年末年始にあたるとき、次の日に延びるかは、この記事では確かめられていません。前の平日までに申請しておくと安心です。
申請書に付ける書類
商業登記法・商業登記規則の決まりでは、主に次のものを付けます。
- 株主総会の議事録登記すべき事項に株主総会の決議がいるとき(商業登記法46条2項)書面決議のときは、議事録に代えて、決議があったものとみなされる場合にあたることを証する書面(同条3項)
- 株主リスト株主総会の決議がいる登記で、議決権の割合が上位の株主(10名か、割合を足して3分の2に達するまでの人数の少ない方)の氏名・住所・株式数・議決権数・割合を証する書面(商業登記規則61条3項)株主が社長1人なら、社長1人の分
- 委任状司法書士などの代理人に頼むとき
申請書は、窓口に出すか郵送するほか、オンラインでも申請できます。登記・供託オンライン申請システムの案内では、ブラウザだけで申請できる登記は「役員の住所氏名変更登記申請」で、目的の変更の登記をオンラインで申請するときは 申請用総合ソフト を使い、電子署名 が必要です。
登録免許税
目的の変更の登記
1件 3万円
国税庁の税額表の「登記事項の変更、消滅または廃止の登記」(登録免許税法 別表第一 24号(一)ツ)
この区分は、ほかの項目に挙がっている登記を除いた「登記事項の変更」の登記です。目的の変更と同時に、役員の変更など別の区分の登記も申請するときは、その区分の登録免許税も確かめます。
税務署・自治体への届出
国税庁の「異動事項に関する届出」の案内では、事業目的の変更 をした法人は、異動届出書を 異動等後速やかに、異動前の納税地の所轄税務署長へ出します。e-Taxで出すことができ、書面のときは1部を持参か送付します。
- 添付書類は「なし」。ただし、異動事項の内容を確かめるため、定款などの写しを見せるよう求められることがある
- 異動届出書の「消費税」の欄に印を付けて出すと、法人の消費税異動届出書などを重ねて出す必要はない(その届出書の対象になる異動事項の場合)
都道府県・市町村への届出の要否や様式は、自治体ごとに決まっています。本店のある都道府県と市町村のページで確かめます。
決算月ごとの1年の流れの中で、定時株主総会に合わせて目的の変更を決めると、議事録づくりを一度にまとめられます(「決算書と株主総会の議事録」)。会社名や資本金を変えるときの考え方も近く、資本金を増やすときは「資本金を増やす(増資)の流れと登記」にまとめています。
参考
- 会社法(e-Gov法令検索)
- 商業登記法(e-Gov法令検索)
- 商業登記規則(e-Gov法令検索)
- 登録免許税法(e-Gov法令検索)
- No.7191 登録免許税の税額表(国税庁)
- C1-8 異動事項に関する届出(国税庁)
- 商業・法人登記手続(登記・供託オンライン申請システム)
この記事は一般的な情報です。会社ごとの判断は、税務署や税理士などの専門家に確認してください。