小規模企業共済と経営セーフティ共済(正式な名前は中小企業倒産防止共済)は、どちらも独立行政法人 中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営している共済です。名前が似ていますが、目的も、契約する人も違います。
この記事では、中小機構の案内に書かれていることをもとに、2つの共済のしくみと、手続きの時期を整理します。入るかどうか、掛金をいくらにするかは、会社と社長個人のお金の事情によって違うので、この記事では判断しません。
2つの共済を比べる
小規模企業共済
- 目的:経営者や役員が、廃業や退職のときの生活資金などのために積み立てる「経営者のための退職金制度」
- 誰が入る:社長個人(役員登記をして事業に従事している取締役など)
- 掛金:月1,000円〜70,000円(500円単位)
- 納め方:本人の個人名義の口座から振替
経営セーフティ共済
- 目的:取引先が倒産したときに、連鎖倒産や経営難を防ぐための資金を借りられる
- 誰が入る:会社(引き続き1年以上事業を続けている中小企業者)
- 掛金:月5,000円〜20万円(5,000円単位)、積み立ては800万円まで
- 納め方:毎月27日に口座振替
中小機構「共済サポートnavi」の案内より。
申し込み先
小規模企業共済
委託団体か、金融機関(代理店)の窓口
商工会・商工会議所・青色申告会などの委託団体、または銀行・信用金庫などの本支店。マイナンバーカードがあれば、オンライン手続きポータルからも申し込める(状況によって使えない場合あり)
経営セーフティ共済
委託団体か、金融機関(代理店)の窓口
申込書はオンラインで作れるが、委託機関の窓口に出す。法人は、掛金を引き落とす口座の設定を窓口で行う
一部の金融機関(インターネット専業銀行など)は取り扱っていません。取り扱う金融機関の一覧は中小機構のページにあります。
小規模企業共済のしくみ
一人社長は入れる?
中小機構の案内では、株式会社の取締役・監査役などの「会社等役員」は、会社の常時使用する従業員の数が条件を満たしていれば加入できます。条件は業種によって違い、商業(卸売業・小売業)とサービス業(宿泊業・娯楽業を除く)は5人以下、建設業・製造業・不動産業などは20人以下です。役員は「常時使用する従業員」に数えません。
一方で、次のような人は入れません(主なもの)。
- 役員登記をしていない人(実質的な経営者でも、登記簿に役員として載っていなければ不可)
- 常勤の使用人兼務役員
- 中小企業退職金共済(中退共)などの被共済者
加入後に資格がなかったとわかった場合は、契約時にさかのぼって契約が取り消されます。
掛金は社長個人が払う
小規模企業共済の掛金は、契約者本人の収入から納めるものとされています。中小機構は、掛金は 事業上の損金または必要経費には算入できない と案内しています。会社の口座から払う掛金ではない点が、経営セーフティ共済との大きな違いです。
掛金は加入後も増やしたり減らしたりできます。納め方は「月払い」「半年払い」「年払い」から選び、振替日は毎月18日(土・日・祝日なら翌営業日)です。
受け取れるもの
会社等役員の場合、受け取れるお金は、どんな理由で受け取るかによって種類が決まっています。
共済金A
会社が解散した場合(破産を含む)
共済金B
病気・けがで役員を退任した場合、65歳以上で退任した場合、契約者が亡くなった場合、65歳以上で180か月以上納めた場合(老齢給付)
準共済金
会社の解散や病気・けがによらず、65歳未満で役員を退任した場合
解約手当金
任意に解約した場合、掛金を12か月以上滞納して機構に解約された場合
共済金A・Bは掛金を納めた月数が6か月未満、準共済金・解約手当金は12か月未満だと受け取れず、掛け捨てになります。
中小機構は、解約手当金は納めた掛金の80%〜120%にあたる額で、掛金を納めた月数が240か月(20年)未満で任意解約すると、掛金の合計額を下回る と案内しています。
経営セーフティ共済のしくみ
会社が入る。設立1年未満は入れない
中小機構の案内では、経営セーフティ共済に入れる会社は、会社法に定められた会社で、引き続き1年以上事業を続けている 中小企業者です。資本金か常時使用する従業員の数のどちらかが業種ごとの条件にあてはまれば入れます(たとえば「製造業、建設業、運輸業その他の業種」は資本金3億円以下か従業員300人以下)。
会社を作ったばかりの年は、まだ加入の条件を満たしません。
取引先が倒産したときに借りられる
取引先の事業者が倒産して、売掛金などの回収が難しくなったときに、無担保・無保証人で共済金を借りられます。借りられる額の上限は、「回収が難しくなった売掛金債権等の額」と「納めた掛金総額の10倍(最高8,000万円)」の少ないほうです。
中小機構は、一般の消費者を取引先とする事業者など、取引先に対する売掛金債権が生じない業種は、貸付の対象にならない場合があると注意しています。自分の会社の取引のしかたに合う制度かどうかは、申し込む前に確かめておきます。
解約したとき
自分の都合で解約(任意解約)すると、掛金を納めた月数に応じて解約手当金を受け取れます。
- 1〜11か月解約手当金はなし(掛け捨て)
- 12〜23か月掛金総額の80%
- 24〜39か月85%〜95%24〜29か月85%、30〜35か月90%、36〜39か月95%
- 40か月〜掛金総額の100%
任意解約の場合の支給率です。会社の解散などによる「みなし解約」、滞納による「機構解約」は率が違います。
会社が解散した場合は、その時点で解約されたものとみなされます(みなし解約)。
税の扱いについての中小機構の記載
中小機構は、経営セーフティ共済の掛金は、法人の場合は損金の額に算入できると案内しています。そのうえで、令和6年10月1日以降に解約して再び加入する場合、解約の日から2年を経過する日までの間に支出する掛金は、損金の額に算入できない とも注意しています。
受け取った解約手当金をどう扱うか、掛金をどう処理するかは、会社の決算に関わります。具体的な扱いは税理士などに確かめてください。決算だけ頼める税理士は「決算だけ頼める税理士・サービス」にまとめています。
手続きの時期
- 設立後小規模企業共済は、役員登記をした社長なら申し込める従業員の数などの条件を満たす場合
- 設立1年後〜経営セーフティ共済は、引き続き1年以上事業を続けてから
- 毎月5日経営セーフティ共済の掛金に関する手続きの締切(中小機構に必着)掛金月額の変更など。登録した窓口を通すので、余裕をもって
- 11月ごろ小規模企業共済の掛金控除証明書が届くその年の9月までに掛金を納めた人。10〜12月に納め始めた人は翌年2月
中小機構の案内による時期です。
年の後半に小規模企業共済に申し込むとき
中小機構は、オンライン手続きポータルから申し込んだ場合、掛金の初回の請求が 翌々月 になると案内しています。令和8年(2026年)の例では、11月・12月にオンラインで申し込むと初回の請求が翌年1月・2月になり、掛金はその年分(令和8年分)の所得控除の対象にならない、としています。
11月・12月の申し込みでその年分の対象にしたい場合は、委託機関の窓口で、その場で現金を納める方法(「現金あり」)で手続きをするよう案内されています。年の途中の申し込みで、その年の分にどう反映されるかは、申し込む前に中小機構のページで確かめておきます。
掛金控除証明書は年末調整か確定申告で使う
小規模企業共済の掛金控除証明書は、年末調整か確定申告のときに、控除を受けるための書類として使います。役員報酬から年末調整をしている会社では、社長自身の年末調整の書類と一緒に扱います(「一人社長の年末調整」)。
参考
- 小規模企業共済 制度の概要(中小機構)
- 経営セーフティ共済 制度の概要(中小機構)
- 小規模企業共済 加入資格(中小機構 共済サポートnavi)
- 経営セーフティ共済の加入資格(中小機構 共済サポートnavi)
- 小規模企業共済の掛金(中小機構 共済サポートnavi)
- 経営セーフティ共済の掛金(中小機構 共済サポートnavi)
- 小規模企業共済 共済金等請求・解約(中小機構 共済サポートnavi)
- 経営セーフティ共済 共済契約の解約(中小機構 共済サポートnavi)
- 小規模企業共済 加入窓口(中小機構 共済サポートnavi)
- 経営セーフティ共済 加入窓口(中小機構 共済サポートnavi)
- 小規模企業共済のオンライン手続きによる加入申込について(中小機構)
- 小規模企業共済 掛金控除証明書(中小機構 共済サポートnavi)
この記事は一般的な情報です。会社ごとの判断は、税務署や税理士などの専門家に確認してください。